目次
はじめに
ITコンサルとして弊社が支援させて頂いている中で、必ずと言っていいほど非IT企業の事業者様が直面されていることがあります。
それは、「システム、ソフト、ネットワーク機器などを購入する際のITベンダーから提示される見積もりが高いのか妥当なのか分からない」という状況です。
システム、ソフト、ネットワーク機器(まとめてITと言うことにします)の導入は高額になることが多いですし、
だいたい5年くらいは利用し続けるという長期スパンの投資になります。
業務に合っていないソフトを利用したり、高いものを売りつけられないように、ここにヒントを書き残しておきます。
少しでも参考になれば幸いです。
ITの見積を精査する10のヒント
業務要件を見直す
まず、どんなことをしたいのか、何のためにそのITを導入するのか、どんな機能が必要なのかを洗い出す必要があります。
例えば、生産管理システムでは、
①在庫管理をしたい。棚卸時の在庫一致率を95%以上にしたい。
②進捗管理をしたい。社内外問わずどこでも作業の進捗が一目で分かるようにしたい。
等々ですね。
そして、それが文書化できているかを確認します。
文書化出来ていないと、それがITベンダーに正しく伝わっていないかもしれませんし、後から確認も出来ません。
「そんなこと聞いていない!」というような認識齟齬があると、後々追加開発による費用を請求されたり、不完全なものを納品される恐れがあります。
実際に導入するとなった場合も途中で変な方向に行ってしまわないように、
大きな幹として、何をゴールとするのか全員の共通認識として持っておく必要があります。
特にシステム開発となった場合は、あれよあれよと追加の要望が出てきます。
その時に投資対効果ももちろん考慮する日露尾がありますが、最終的なゴールに対して不要な機能を実装しようとしていないかを精査する必要があります。
また、非機能要件と呼ばれる、事業を行う上での要件とは別の要件も決めておく必要があります。
例えば、
①情報漏洩を防ぐために2段階認証機能が必要である。
②24時間365日稼働するシステムである。
といった具合です。
クラウドサービスやSaaSを利用することで、そのあたりの保守運用・セキュリティ面の担保をしやすくなっているので、
出来る限りクラウドサービスを利用することを推奨します。
将来的な拡張性や可能性を考慮する
要件の洗い出しをする中で、現在の悩みや課題に対してはポンポンと要件が出てくるのですが、
上述した通り、ITを導入すると、何年も同じものを利用し続けることになります。
なので、将来起こりうる組織変更や事業の拡がり方を、ある程度は予測しておく方が望ましいです。
これも下記に例を出します。
システムであれば「多拠点での利用や海外での利用」「社外にPCを持ち出してシステムを利用」「スマホでのシステム利用」といったことが容易に考えられます。
ネットワーク機器であれば「1つの拠点でPCを利用する人数が極端に増える」ケース等が該当します。
※だいたい何人まで利用できるかが機器ごとに決まっていて、それを超えるとインターネットに接続できなくなったり、極端に通信速度が低下する可能性があります。
クラウドサービスだと、その点、ライセンス契約(1ユーザーあたり何円)の形をとっているサービスも多いので、柔軟に拡張することが出来たり、
元々、社外にあるシステムを利用することになるので、リモートワークでも利用可能な場合が多いです。
そういった面でもクラウドサービスを利用するメリットがありますね。
経営戦略を加味した内容か、全体最適になっているか確認する
将来的な拡張性や可能性を考慮することと重なる部分もあるのですが、
短期経営目標(1年)や中期経営目標(3~5年)から落とし込んだ経営戦略を加味出来ているか確認する必要があります。
例えば、今まで下請けメインで業務を受注していた衣類縫製工場のケースで考えてみましょう。
短期の販売戦略:売上比率をBtoB:BtoC = 1:9にするべく、BtoCの販売チャネル(ECサイト or 楽天等のプラットフォーム or SNSショップ機能)を構築する。
中期の販売戦略:売上比率をBtoB:BtoC = 5:5にするべく、新規の顧客を獲得しつつ(詳細は割愛)、BtoCの販売チャネルで得た顧客情報から休眠顧客にアプローチを行い、リピート率90%を維持する。
中期の販売戦略には、顧客情報を利用して高いリピート率を維持するという旨の記載があります。
その最も基本的な方法として、RFM分析があります。
RFM分析とは、「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」という3つの指標を用いて顧客をグループ化する分析手法です。顧客の性質にあわせたマーケティング施策を実践するために有用で、顧客分析の基本ともいえる分析手法の1つです。
【引用】NECソリューションイノベータ RFM分析とは?顧客分析の基本手法と施策例を解説 <https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20220218b.html>
この「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」の3つの情報を収集できる必要があります。
ということは、販売チャネルを選ぶ際に注目しておきたい機能は下記が挙げられます。
①「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」の3つの情報を顧客ごとに収集する機能
②アプローチする優先度の高い顧客に絞って一斉にメール配信を行う機能
③アプローチする優先度の高い顧客に特別クーポンを発行する機能
といったように、ある程度は中長期的な目線を持ちつつ、事業の拡がり具合を加味した方が、後々システムの入れ替えをせずに済みます。システムの入れ替えを行う場合は、初期導入費用や新しいシステムになれるための教育コスト、新旧並行してシステムを動かす手間・工数、データ移行のためのコストなどがかかってきます。
また、全体最適になっているかどうかですが、現場で働くスタッフは、自分の仕事が楽になるかどうかだけに注視してしまう傾向があります。
「仕入れ・調達の業務が楽になるようにシステムをカスタマイズしたら、経理の業務が倍になってしまった」
といったことも、容易に起こってしまいます。
全体最適の目線を必ず持つ必要があり、その目線を持つことが出来るかどうかは、今までの経験にかなり左右されます。
部分最適にならないようにする為には、他部署の業務に関係しそうな部分は必ず一緒に討論を行ったり、打ち合わせには両方の業務に精通する人物に必ず出席してもらうなど、工夫が必要になります。
オーバースペックではないか確認する
これは、IT見積あるあるです。これで多大なITコストを支払っている企業が多い印象を受けています。
さて、ここで一つ問題です。
下記のように、早く目的地にたどり着きたい場合、あなたはどちらの車を購入しますか?
・・・。
実際に車に乗ることを考えてもらうと分かりやすいと思うのですが、
日本には新東名高速道路と東北自動車道路を除いて、法定最高速度100km/時を超える道路がありません。
この場合、どちらの車を購入しても、目的地へ到達する為の時間の差はありません。
だから、時速100kmまで出すことが出来て、価格が安い方の車を選んだ方が良いのは分かると思います。
車に例えてみると分かりやすいのですが、ITのことになると分からなくなるケースも少なくないです。
例えば、ネットワーク機器のIT見積を例に挙げてみましょう。
事業者「最近、インターネットが遅くて仕事の効率が落ちているんだよ。だからインターネットが速くなるようにしたいの。」
ITベンダー「既に弊社のネットワーク機器を入れてもらってますが、一つ上のグレードに上げることでスピードが上がりますよ。」
このITベンダーの提案は”さも”正しそうですよね。
ですが、そのネットワーク機器のグレードを上げれば本当にインターネットへのアクセスが速くなるのでしょうか?
本当は、インターネットの回線を引きこんでいる業者と契約しているプランが、最も速度の遅いプランであり、ボトルネックになっているかもしれません。
本当は、ネットワーク機器からPCへとつなぐLANケーブルが古くてそれがボトルネックになっているかもしれません。
本当は、PCのディスクがHDDであり、PCの起動や動作が遅いことから、インターネットへのアクセスに時間がかかっていると勘違いしているのかもしれません。
結局、ちゃんと調査しないと、何が原因かは分からないんです。
ITベンダーの営業担当がそのことを理解せずに販売することもありますし、理解していても高いものを販売することもあります。
さて、ここでもう一問です。
下記の場合、あなたはどちらのパソコン(PC)を販売しますか?
・・・。
販売業者が高いものを売りつける気持ちが分かりましたでしょうか?
非IT企業とITベンダーの間で、持っている情報量の差がかなりあるので、こういったことが起こります。
それを防ぐために、弊社はIT見積のセカンドオピニオンを行っております。是非ご活用くださいませ。
代替品がないか確認する
これは、汎用的なソフトウェアでよく起こります。
例えば、アンチウイルスソフトは良い例ですね。
(※ここではアンチウイルスソフトはそもそも要らないといった議論はしません。)
アンチウイルスソフトは各メーカーから様々な種類が発売されています。
等々
ソフトによって機能の差はあるものの、劇的に変わることはあまりありません。
アンチウイルスソフトの見積もりをもらったときに、ほかのソフトはないか確認してみましょう。
もちろん「社内のサーバで独自のシステムが稼働していて、それはMcAfeeでしか検証していない」「他のアンチウイルスソフトに入れ替えたときにどんな影響があるか分からない」
といったこともあり得ます。その場合はシステム検証費用とソフト費用、インストールにかかる工数や初期設定費用などを算出して、投資対効果を考えるのが一般的です。
投資対効果を確認する
投資対効果の確認とは「〇○○万円の投資をするが、1年で■■万円のコスト削減ができるので、3年でペイできる!」という判断をすることです。
これは、IT以外の設備投資をする際にも検討することになるので、当たり前かもしれません。
投資対効果を測定するときに、システム導入であれば作業工数を減らすことがコスト削減につながるため、
その削減コストとシステム導入費を天秤にかけてコストメリットを判断することが多いのですが、注意点が2つあります。
1.システムを導入することで空いた作業工数は断片的になることが多いので、空いた時間を何に活用するかを決めておいた方が良い
※結局、残業代の削減や人員の削減をできればコストメリットにつながるのですが、一人一人の時間を少しずつ削減する場合、コストメリットが出ないこともあります。
2.システムを導入することで管理するデータ量が多くなり、データをインプットする時間を加味出来ていないことが多い
ITを導入することで業務の流れなどが変わる場合、下記の3パターンで可視化しておくと、導入前後で減る業務・増える業務を可視化することが出来るので、まとめておくことをおすすめします。
①現状の業務フロー(As Is)
②あるべき姿、将来的な業務フロー(To Be)
③ステップ式に進める場合の途中の状態(Can Be)
一気にシステム化を進めてガラッと業務を変えてしまうと、現場が混乱したり、想定していなかった問題にぶち当たることがあります。
③のようにステップ式に進める中間地点を決めておいて、業務や経営状況によってピポット(方向転換)できるようにしておくことで、現場へのスムーズな導入と、変化への対応を行うことが出来ます。
ITの見積内容に含まれる機器情報・タスク・スコープ・成果物を確認する
ハードウェアであれば機器が適正かを確認します。
システム開発などのプロジェクトに関わることであれば、タスク(作業内容)やスコープ(プロジェクトの概要と見通し)、成果物を確認します。
そこから、適正な価格かどうかを判断することもできます。
ネットワーク機器の入れ替えであれば、インターネットに接続できなくなる期間がありますし、システム改修であればシステムを利用することが出来なくなります。
そういった場合に業務への影響がありますので、いつ頃、どんな作業を行うのかを確認しておく必要があります。
IT見積内容に含まれる保守やサポートを確認する
機器の導入にしろ、システムの導入にしろ、ITを導入する際にはランニングコストとして、保守・サポート費用がかかります。
保守範囲の確認と、保守外の作業依頼はどうするのか等、事前にすり合わせを行っておくことで、後々のトラブルを低減することが出来ます。
社内で巻き取れる業務はないか確認する
これは、見積費用の削減に役立つ考えです。
やりたいことが抽象的すぎる状態でITベンダーに丸投げをしてしまうと、ITベンダーとしてはリスク分を多めに上乗せして見積もりを提示してきます。
どんなことをしたいのか、どんな機能が欲しいのかなどの要件定義を社内で行ってからITベンダーに相談することで、要件定義の作業分の工数削減が出来たり、上乗せしているリスクを少なくしてもらうことが可能です。↓はシステム開発を例にしています。
また、新しい事務所を設立するときにITインフラの構築まで施工業者にお任せすることになるケースも多いですが、社内で保管しているLANケーブルを再利用できないか考えたり、ハブなどを別の仕入れ業者から安く購入することで、費用を削減することが出来ます。
※ただし、こちらで準備して良いのかを確認する必要があります。
利用できる補助金がないかを確認する
ITで解決出来ることがとても増えており、今や経営とITは切っても切り離せない関係にあります。
IT導入補助金はもちろん、小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金においても、IT導入費用を対象経費にできる場合があります。
ただし、ITベンダーに発注してしまった後に補助金の申請はできませんので、補助金を活用する際には、事前に採択・交付決定されている必要があります。
補助金に関するご相談もお受けしておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
おわりに
非IT企業様限定にはなりますが、ITの見積もりを無料で精査する、ITセカンドオピニオンを行っています。
新たに事務所を構える / 事務所を改装する
新たにパソコンを購入する / パソコンを入れ替える
新たにサーバを構築する / サーバを入れ替える
新たにソフトを導入する / ソフトを更新する
パッケージシステムを導入する
システムを開発する
等々
自社では妥当性が判断できなかったり、本当に自社に合っているのか、分からないことがあると思います。
無料で相談をお受けしておりますので、後悔される前にご相談頂けますと幸いです。